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三浦海岸駅

三浦海岸

海は 懐かしい色だった
ここに来たのは まだエミが小さな頃だった。三浦海岸

傍らには 女性がいた。
髪が長くて 細くて 白いコートを着た女性だった。
どうしたって エミは横顔しか思い出せないのだけれど…

貝殻の欠片を拾っては 懸命に小瓶に集めていた。貝殻は桜色で それはそれは綺麗だった。

なあに?さくだ?

エミはかたことで尋ねた。すると女性は笑いながら三浦海岸

うふふん、さくだじゃなくて サクラ貝よ。

もうすぐ早い桜が咲いてここも桜の花びらが飛んでくるかもしれないわね?そうしたら花びらもサクラ貝も小瓶に詰めておきましょう…あなたと過ごした幸せを そっと閉じ込めるみたいに…
そうしていつか わたしはそれを持って旅に出るのよ…

女性は笑っていた。エミには言葉の意味は理解できなかった。

ただ 横顔だったけど…貝殻に負けないくらい綺麗で儚い微笑みだと思った。

その女性が帰り道 どこかの小さな店で 買ってくれた真っ白なテディベアのキーホルダーは エミが大人になった今 すっかり くすんだ色になったけれど…まだ手の中であたたかく見つめている。

早咲きの桜とこの海を見ると その女性を思い出す。
淡い色した思い出…。早咲きの桜の頃 優しい女性と過ごした記憶…。

ママー!こっち来て!

娘が呼んでいる。エミは返事を返す。

はーい!今行くわ!

ねぇ、見てくれる?わたしはこんなに大きくなり、あなたと同じ母になりました。

あなたがくれた貝殻の小瓶に 今年は桜も入れましょう。
小さな白いテディベアはちょっと汚れてしまったけれど、大切にまだ持っています。

そして あなたに似たこの子は今、ピンクのテディベアを連れています。


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